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「まずは罪を償って最善を尽くします。その後、あらためて真崎伊織として認めてもらえるように、また頑張らせてほしいって——友馬くんに言ったんです」 夏の話し合いから一週間経ち、店に詫びに来た真崎伊織は、当時、決意表明のようにそう言っていた。 要するに、関係を再構築していきたいということだろう。 それに対して里見は「あんたずうずうしいよ」とか「気持ち悪いって自覚したほうがいいですよ」などと容赦なく言ったが、彼は「ですよね、えへへ」などと笑うばかりで、その打たれ強さには脱帽するばかりだった。 そして、それ以降も真崎伊織はめげずにあぽろに来るので、今では里見も白旗を上げたらしい。ポジティブというか、マイペースというか——彼はおそらく、友馬に対してもこの調子なのだろう。 一方、友馬の真意はまだわからないままだが、多分、真崎伊織を恨んではいないのだと思う。 許している最中なのか、それとも真崎伊織として認め始めている段階なのかは、定かではない。 しかし、友馬はあれからよく笑うようになり、顔色もよくなった。 諦めとは異なる、新たな穏やかさを獲得したようにも思える。 それならそれまでだ。 風馬はもう、それだけでよかった。 大切な弟が健康で笑ってさえいれば、真崎伊織と彼の関係性に、口を出すつもりはない。 「友馬、緊張してるな」 風馬は、画面の中に収まっている双子の弟の姿を見ながら言った。 息子に撮られた友馬は、全身に力が入っているように見える。 身につけているストライプのノーカラーシャツがよく似合っていてほっとした。この日のために、風馬が一緒に見立ててやったやつだからだ。 ——今日はこうして、友馬と雅樹が久々の再会を果たしている。 もちろん、仲介したのは真崎伊織だ。彼はあの時の約束を守り、友馬と雅樹の時間を取り戻すために奔走しているらしい。 本来あるはずだった2人の時間を、自分が奪った——真崎伊織はそう言ったが、はたして本当にそうだろうか。 消極的な友馬のことだ。彼がいなければ、手紙のやりとりは自然と途絶え、どっちみち雅樹と再会することはなかったのではないかとも、風馬は思う。
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