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テーブル席とカウンター席がそれぞれ4つずつしかない10坪程度の小さな店内。大きな窓ガラスから午後の陽が差し込むと、床や白い壁、あたり一帯の空気までもがペールイエローに染まる。
光の筋の中を舞う埃の、スローな動きを目で追いながら、茂上風馬はカウンターに両手をついた。
ギンガムチェックのテーブルクロスがかけられた合板のテーブル。体勢を変えるたびに軋むラタン製のチェア。等間隔に設置された、ぶどうのシルエットのデザインが施されているペンダントライトは、劣化で黄ばんでいる。
そして壁には「にしざわ食品」のロゴと玉のみで構成された、得意先からもらったカレンダー。
引き算というものを知らない店内は、掃除をしてもどこか埃っぽく、実家の雑然さを思わせる。
店がいまいち繁盛しないのも、この中途半端に引きずった平成っぽさのせいなのだろうか——風馬はひとり、首を傾げる。
表参道の小洒落たカフェでなくとも、せめて昭和テイストのレトロ純喫茶だったら、再ブームも狙えたのかもしれない。
しかし、先代マスターが一から築いてきた店だ。開店当時から通う、保守的な常連もいる。雇われの身である自分が、好き勝手にいじくり回すわけにもいかないのだ。
言い訳で始まり言い訳で締めるといういつもの一巡を終えて、風馬は客席に視線を戻した。
つまり「喫茶あぽろ」のいつも通りの午後だ。
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