50人が本棚に入れています
本棚に追加
初めての理人さんとの行為は今まで以上に幸せな気分だった。男の人でイける自分に驚いたが、何より、理人さんが自分のモノで感じている姿が芸術品のように綺麗で脳が震えるほど、徹史を虜にさせていた。
暫く余韻に浸る徹史の一方で理人さんは終わった瞬間にベッドから降りると裸のままソファに足を広げて座り、一服を始める。
事後は身を寄せ合ってイチャイチャするものだと信じて疑わなかった徹史にとって彼の行動は少し寂しく感じた。しかし、世の中には事後は淡泊になる人だっていると耳にするし、致し方ないのかもしれない。まだ正式に交際を申し込んだわけではないけれど、身体から関係が始まることもある話だし、期待をしていいんだろうか。
徹史は理人さんの姿を目で追いながらベッドから起き上がる。煙草の煙を燻らせて物思いにふける彼の姿にドキッとさせられながらも、徹史の頭の中は今後のことでいっぱいだった。
「あの……。理人さん、俺達って……。その……」
「あーそうだ。連絡先教えてよ?」
「はいっ」
徹史が本題を切り出そうとしたのと同時に、理人さんがスマホを手にして左右に振ってきたので、大きく頷いた。彼の気が変わらぬうちに急いで鞄からスマホを取り出すと理人さんの座るソファの隣に正座をした。お互いのQRコードを読み取って連絡先を登録する。
「連絡してダメな時とかある?」
「いいえ、特にないです。できれば毎日……。いや、理人さんはありますか?」
できれば毎日したいと提案しようとして言葉を呑み込んだ。それはきっと世間で言う『重たい男』の典型的な行動のような気がしたからだ。理人さんは恋愛関係においてかなり淡泊そうだし、ここは自分も大人になって相手のペースに合わせることが必要な気がした。
「ないけど、あまり私情に踏み込んでほしくないから誘いのメッセージ以外送ってこないで」
「はい……」
誘いの連絡以外してくるなということは、恋人特有のイチャイチャメッセージも禁止ということだろうか。せめて週一くらいはやり取りを通して、彼の好きなものとか彼のことをもっと知りたかったがそれも禁止なのだろうか。
「あと、仕事の繁忙期は俺からするとき以外は時間作れないときがあるけど」
想像以上に淡々としている彼を見て、本当に付き合っている方向で合っているのだろうかと不安になる。今までの恋愛遍歴が当てにならないほど、この人との距離感が難しそうで雲行きが怪しい。
「だったら、そういうときは週一くらいで理人さんに連絡するのはアリですか?会えないときはメールで交流を深めたいというか……」
少しでも恋人同士なのだからと思い、せめてもの妥協案を出してみたが理人さんは煙草の灰を灰皿に落とすと天井を仰いでカッカッと笑い始めた。
最初のコメントを投稿しよう!