愛しているのに……

5/10
前へ
/33ページ
次へ
「く、栗山……。ちょっと待て」  レストランの上階の予約してあったホテルでお互いにシャワーを浴びた後、すぐさまバスローブを脱いで、最後の砦である下着だけ残して肌を重ね合わせた。  いつもは急ぎ足で理人さんが主導権を持って進んでいく行為。レストランで宣言した以上、主導を握るのは徹史の番で、今日はゆっくり時間をかけて理人さんを愛するつもりだった。  理人さんをベッドに押し倒し、髪を撫でながら唇を重ねていると彼に肩を押される。見下ろした彼は怯えのような、不安な様子を覗かせながら此方を見つめてきた。 「や、やけにキス、長くないか?」 「これが普通です。理人さんは真面に交際したことないから知らないでしょ?恋人同士はちゃんとキスで愛情を確かめ合ってから始めるんです」 「そ、そんなの知るかよ……。それに俺たちはっ……」  また得意の捨て台詞を言われそうになり、徹史は咄嗟に理人さんの唇に己の唇を重ねて塞いだ。 「セフレだなんて言わせませんよ?今日は恋人の設定じゃないですか。雰囲気、楽しんでください」 「楽しめって言われたって……」  理人さんの戸惑いごと優しく受け止めようと、子供をあやすように頭を撫でながらキスを体中に落としていく。今、この時だけでもいいから理人さんは自分のモノだと証を付けるように欝血痕を残す。 「んっ……お前、痕付けてんだろ」  強く全身に吸い付いたことで、気づいた理人さんは身を捩らせたが、徹史はどこまでも彼を追いかけて唇を寄せるのを止めなかった。 「いいじゃないですか?どうせセフレは俺しかいないんでしょ?」 「そういう問題じゃ……」 「貴方の項も、肩も、可愛い乳首もお腹も、腰も、全部可愛がってあげるので大人しく抱かれてください」 「そんなことはいいっ……んはぁっ」  口調では強く言っているくせに、理人さんの全身の力が抜けていく。  多少なりとも感じてくれているのか、時折甘い声を漏らしては「くりやまぁ……」と息の抜けた声で呼んでくる理人さんが色っぽくて愛おしい。  右側の胸の突起を口腔内に含み、吸ったり、甘噛みしたり舌で転がしたりしながら、もう片方の先端を弄ってやると、理人さんは息を荒く吐きながら下半身を捩らせている。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加