愛しているのに……

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「こんなのっ……。やだっ早く……。いつもみたいに中でっ……」  いつもであれば前戯に時間をかけたりしないから理人さんとしては一刻も早く挿入れてほしいのだろう。けれど、今日はじっくり感じてほしい。 「ダメです。嫌がっていても理人さん、いつもよりいっぱい感じてくれていますよ?触られるのが気持ちいいんじゃないんですか?ほら、先っぽだってキスだけなのにこんなに濡らして……。いつもは、後ろ攻めないと感じてくれないのに」 「違うっ。……やだっ」  布越しからでも分かるほど上を向いて、下着を濡らしている理人さんのモノ。両手をかけてゆっくりと脱がせると、お臍に密着するほど反り勃っていた。根元から握り、先端から溢れ出す雫を親指で撫でてやるとビクリと身体が震える。徹史も下着を脱ぐと、理人さんの両足を肩に抱え、剥き出しの後孔に指を挿入れた。 「あっ……あっ……早くっ」   徹史の挿入れた指三本を待ち構えていたかのように中へとのみ込んでいく。もっと遊んであげたいけど、我慢を強いられたせいか、こんなにも欲しがって甘えてくる理人さんに頭がくらくらするほどに徹史の昂りは爆発寸前であった。 「多分、理人さんのだけで入れられそう……」  僅かな理性でゴムをつけて理人さんの中へと挿入する。 「んッ……。はぁ、はぁ……。くり……やま」  腰を揺らすたびに喘ぐ彼が美しくて、徹史は上半身を倒してベッドに理人さんの頭を挟むように肘をつくと唇にキスを落とした。いつもは力任せに激しく腰を振って、キスなんかする余裕がない。もっと理人さんが好むようにいたぶることだけ考えてシていたから満たされた気分になる。 「愛してる」  理人さんを抱きながら感情が溢れてしまった徹史は、思わず耳元で囁くと彼は耳を塞いでしまった。 「理人さん、愛してる」  愛してると囁いた途端に嬌声のような喘ぎ声とともに中で締め付けられて、危うく達しそうになってしまう。擬似であったとしてもちゃんと伝わっているに違いない。俺の本気が……。  きっとこの人は、誰かに真剣に愛されることに慣れていなくて、怖くて拒絶をしているだけ。真剣に愛して抱くことが出来たなら、もしかしたからこのセフレの関係も良い形で終えることができるのではないかと微かに期待を寄せてしまう。  徹史は塞いでいる耳を強引に引き剥がすとベッドに抵抗を示す手を縫い止め、右手を指先に絡めることで彼の耳元を死守した。 「理人さん、ちゃんと俺の声を聞いてください」 「それは嫌だっ……。くりやまっ……。やめろって」  再び空いた彼の右耳に顔を近づけて「理人、愛してる」と何度も囁く。   ちゃんと逃げないで欲しい……。  俺の本気が少しでも理人さんに伝わればいい。 「ぅぅぅぅん……。やだ……」 「こうやって囁く度に理人さんの身体は俺のこと抱きしめて答えてくれていますよ?理人さんも俺に愛してるって言ってください」 「そんなこと言えるわけっ……」  身を捩らせて逃げる理人さんを追いかけ、上と下で彼を責め立てる。徹史にとってはもう、これは擬似的なものでは無かった。  本気で貴方が好きだから、本気で抱いている。  貴方の事が好きであることをわかって欲しくて……。真剣に受け止めて欲しくて……。  理人さんの奥を夢中で突きながら伝わるようにと強く願う。 「理人さん……。理人さん……。理人…っ」 「……だっ。やすふみ……嫌だっ…おれはっ……かず、くんじゃない……」  徹史は途端に聞かされた知らない人の名前に、半身を起こしては動きを止めた。 「やすふみって誰ですか?」  嫉妬心剥き出しにそう問いかける。すると、彼は我に返ったようにハッとした表情を見せると、頬に涙を伝わせながら口を戦慄かせていた。 「ちがっ……」 「やすふみって、カズくんって……。もしかしてさっき話していた……」  先程まで帯びていた熱が冷めていく。 「うるせぇ。ど、どけよ」  徹史が茫然としていると、肩を足で蹴り上げられて繋がっていた中を引き抜かれた。そのまま布団へ尻もちをついた徹史など目もくれず、理人さんは慌ててベッドから降りると、ソファに掛けてあった衣類を身につけ始める。理人さんは涙を拭いながら顔を真っ赤にし、徹史が引き止める間もなくテーブルにお金を叩きつけ、ホテルを出ていってしまった。  先程までの夢のような甘い時間が、本当に夢だったかのように寂しさが押し寄せてくる。  怒らせてしまった……。もしかしたら、この関係を切られてしまうだろうか……。ベッドの上の生暖かい温もりが徹史に寂しさと不安を抱かせた。
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