重いとか軽いとか

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重いとか軽いとか

人を好きになるのに軽いとか重いとかで、簡単に気持ちを推し量っていいものなのだろうか。誠心誠意、自分なりにその人のことを心から愛しているだけ。重さで量るようなものじゃない。なのに、自分が出会う人達は『若いうちは遊びたい』と言って本気の恋をしたがらない。よって自分のような人間は敬遠される。  大学最後の年に結婚を考えるほど好きだった人がいた。彼女との将来の為に就職活動も死に物狂いでして、それなりの名の知れた企業から内定をもらうことが出来た。そんな矢先に、彼女が他の男とホテル街へ消えていったのを見てしまった時は絶望した。  就活でお互いになかなか会えなくとも、毎日連絡はとっていたし、電話もしていた。この会えない時間は彼女との将来の為だと信じてきたのに呆気なく裏切られ、未来設計は崩壊していった。  それでも何処が悪かったのと問うてみれば『徹史(てつし)の愛は重すぎる。もっと気楽に付き合いたかった。結婚だなんて、まだ考えていない』と返ってきた。今回だけじゃない皆、口を揃えて言ってくる。『顔に似合わず重い』『徹史の愛は私じゃ受け止めきれない……』自分は唯、真剣に恋愛をしたいだけなのに……。 「でさ、年下の彼氏がピュアで可愛くてさ」  春を迎え、学生から社会人になって早一ヶ月が過ぎた。栗(くり)山(やま)徹(てつ)史(し)は大型連休に入り、未だに癒えない失恋の傷を抱えながら大学時代の友人である千坂(せんざか)昭(あき)良(ら)と繁華街の居酒屋で愚痴大会を繰り広げていた。とはいうものの、会社への愚痴は八割がた千坂のもので、気づけば愚痴が彼自身の恋人との惚気話にすり替わっていた。 「千坂の恋人って大学生だっけ?」 「そうそう、大学一年生。まだ高校から上がりたてのピチピチよ。俺の方が年上だろ?だから相手はうーんっと甘えてくんだよ」  頬を緩めて幸せそうにスマホの待ち受け画面の恋人とのツーショット写真を見せつけてくる。確かに、見た目からして実家のポメラニアンを彷彿とさせるようなふわふわとした青年だ。元ラグビー部で体格の良い千坂とは美女と野獣ならぬ美男と野獣のような組み合わせではあるが、終始ラブラブであることは写真からも伝わってくる。 「幸せそうでいいなー……。俺も好きな人ほしいかも……」  人の幸せ話を聞いて羨ましく思うのは、徹史の心のぽっかりと空いた穴が未だに埋められていないからだった。  しかし、出会いなんて学生の頃に比べたら愕然と減ってしまう会社勤めの徹史に新しい春が訪れるのは遠い未来のような気がした。
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