それでも好きな人(櫂said)

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だから自分から「お前のことが好きだ」なんて言い出すことなどできなかった。 玉砕して自分が傷つくのが怖かったからだ。 中学校卒業間近、そんな好きになった人に想われていない辛さを抱きながら抱かれる関係を自分は続けられなかった。 だから卒業と同時に自然消滅させようと連絡も取らなかったし、向こうも予想通り音沙汰無しになった。  その時に一人のやつに深入りするもんじゃないと思い知らされた。 忘れようと心の奥底に封印していた想い。心の奥底に閉まって一生開かずにいる筈だったのに今頃再会なんて、皮肉だ。 月日が経った今、幼馴染と想い合えたかもしれないし、そうじゃなくても別とやつと付き合っているかもしれない。  そんなアイツを見て自分は耐えられるだろうか。  だけど可能性はまだあって、もしフリーだったら·····。 そんなことを考えちゃいけない·····。  櫂はシャワーのお湯を顔に当てては両手で覆い、水滴を拭うように顔を擦った。 バスローブを着てシャワールームから出ると栗山は下着一枚でベッドに寝転がっていた。 腹這いになって熱心に何かを眺めている。気になって身体を傾けて覗いてみると、テーブルに置きっぱなしにしていた櫂のタブレットを弄っているようだった。 「おい、人のもんに何してんだよ」  栗山に近づき、タブレットを取り上げようと手を伸ばしたところで、奴はくるりと身体を回転させるとベッドの反対側へと逃げように転がって行ってしまった。 正直、ウザ絡みを仕掛けてくる栗山から取り上げるのは気だるかったが、仕事関係の資料データがあるタブレットなだけに外部に安易に見せていいものではなかった。
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