重いとか軽いとか

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職場恋愛という線もあるが、周りの目もあってかハードルが高い。それに、自分は公私を分けて仕事ができるほど器用ではなかった。好きな人が職場にいたらその人しか見えなくなってしまうほど、恋愛に溺れやすい性質だと自覚はある。  それでも、気になる人くらい居たら毎日が楽しいんだろうな……。 「お前はまず、その凝り固まった恋愛観をどうにかしろ。大学生の分際で指輪を渡すとか馬鹿すぎるだろ」 「だって、好きになる人にはいつだって本気だから……。それにあの時は社会人になってお互いに会える時間が減ると思ったから結婚してしまった方がもっと一緒にいれるかなー……って思ったんだよ」  容赦のない千坂の詰りに徹史はそっぽを向いて唇を尖らせる。 「お前って顔面は軽そうに見えてホント考えることは重いよな。連絡とかマメにするタイプだろ?」 「うん、毎日おはようとおやすみは絶対する」  徹史の中では恋人同士なら当たり前のことを言っただけであったが、千坂はあからさまにどん引いたように苦笑を浮かべてきた。 「うわー。そりゃあ、彼女も離れてくだろ。二十代前半なんて遊びたい盛りなんだからさぁ、もっと気楽に恋愛しろよ」 「そんなこと言われても……。俺はいつだって本気で恋愛がしたい」  向かいから呆れたような溜息が聞こえてくる。千坂の言う通り、他者への執着心があることは自覚しているが、直せと言われてそう簡単に直せるものじゃない。   好きな人ができるとその人しか見えなくなる。それの何がいけないのだろう……。  そう思う反面で、今回の失敗は自分にも非があると改めなければならないことも頭では理解していた。せめて次に誰かを好きになった時は必要以上に詮索したり、指輪を贈ったりの世間で言う『重たい』と言われる行動は避けようと思っていた。 「千坂は、その子とどこで出会ったの?」 「繁華街の路地にあるところのバーだよ。お前は行ったことないだろ?」  千坂は大学生の頃から恋愛対象が同性であることは知っている。在学中も全くその手のことには抵抗がなかった徹史に、何度惚気話を聞かされたことか……。   そんな千坂が行きつけるバーなのだから同じ恋愛志向が集まる場所に違いないのだろう。 「うん……。やっぱりその、千坂みたいな人が集まる店なんだよね?」 「まぁ……。両方いけるって奴も中にはいるけどな。お前が抵抗なければ行ってみるか?新境地開けるかもしれないぞ?」  ニヤニヤと頬を緩ませる千坂と自分の手元を交互に見遣る。同性を恋愛対象として考えたことがないから分からない。行ったところで結局自分は異性愛者だと分かれば冷やかしになるような気がして素直に頷けなかった。 「そんなところに俺が行って大丈夫なの?俺、同性を好きになったことないから確信がないし、単なる冷やかしにならない?」 「ならねぇよ。強いていうなら、獣の餌食になるかもな」  千坂が両手をガオっと顔の横に出して、徹史に向かって食らいつくすような動作をする。  「獣⁉俺、ライオンかなんかの餌になんの?まだ死にたくないんだけど……」  俺は肉食獣と戦いをさせられるのだろうか……。  そんなことを考えていた徹史の発言に「そっちの意味じゃねーよ。お前のケツの穴だよ」と補足されたことで、全てを理解した。いわゆる処女を奪われるという意味なのだろう。徹史は同性のモノが自分の肛門に入る想像しては身震いして、自然と穴を窄めようと臀部に力を入れた。
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