ある日、白い繭

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 まだ午前中だというのに、濡れた石畳は空からの強い光で熱せられて、揺らいで見える。    一時的に出来た水たまりに反射するお陽さまは、いくつもの光の波を作って町並みを照らしている。綺麗だと思う。でも同時に、今日もとても暑くなりそうだと感じた。  石畳と古い町並みに彩られた古都の風情は、ここに住んでいる私達の誇りにもなっている。  もちろん、この風景を維持するために、行政と住民が一緒になって取り組んでいる。例えば、電柱を撤廃して、配線を地中に埋める。その際に、傷んでいた石畳を一新して、さらにかつてアスファルトだった向こうの道も石畳に換えて、ここら一帯を京町家の並びらしい風景に作り替えた。  そうなると、各家もさらに維持のために、自分たちの町家を大切に修繕するようになった。  古く見えるけど、本当は新しいこの風景が、私は大好き。
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