ある日、白い繭

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 軒下の僅かな日陰を探して、なるべく直射日光を避けて歩いた。そして、地下鉄に乗り、宝ヶ池公園まで向かう。  宝ヶ池は、森に囲まれていて、澄んだ水を湛えている大きな池だ。また、国際会館が隣接しており、東側にはかつての競輪場だったところを、子どもが遊べるように公園として整備されている広大な区画がある。  私は、ホームに降りてから、改札口の近くの多目的トイレに入り、そこで背中のリュックを台に置いた。  帰りは暑さにやられてへとへとになっているだろうから、このままの姿で帰るだろうけど、せめて行く時くらいはオシャレしても良いと思ってる。  リュックの中から、作業服を取り出して、白のロングTシャツとぶかっとしたベージュのつなぎ、それから安全靴と黄色のヘルメットを被った。  大きめのプラスチックの水筒を、カラビナでベルトに引っ掛けると、凍らせてある中の水分が腰にひんやりと伝わる。 「さて、行きますか!」  鏡の中の自分に聞かせるように、独りごちてから、にっこりと笑ってみせた。地下鉄の階段を登り、さらにしばらく歩いていくと、宝ヶ池の森にそれが見えてきた。  森の合間、青々と茂る夏の木々の中に見える、明らかに真っ白い半円形の何か。 本当に、あれは一体何なのだろう。
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