ある日、白い繭

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 そんな、もうすぐ夏休みを視野に入れて、来週には期末試験を控えていた、午前授業の小休憩時間での事だった。  私は担任に呼び出されて、普段は使用する事もない職員室横の階段を登り、会議室を過ぎて、突き当たりにある校長室へと向かった。  校長室の前で、一旦グーにした右手を口元にあてて、コホッと咳払いする担任の仕草を見ていた。ただならないことなのかも……。 なんて思ってもいた。  ガラガラっと扉をスライドさせると、ソファに座っている白シャツにネクタイ姿の校長先生と、スーツ姿の恰幅の良い人がひとり。それから迷彩柄の軍服を着た人がふたり。 「待っていたよ。 桂木 星菜(かつらぎ ほしな)さん」  どこか含みのある言い方で、私を見るスーツ姿の人……どこかで見たことがあるような気もする。なのに、うーん……思い出せない。  ともかく、私はそこで、衝撃的な事を聞かされる事となった。  あの繭、大人が近づいて触れようとすると、その日の朝起きたあたりからの記憶が消されてしまい、精神的な負担が懸念されたとの事だ。 では、遠隔操作のアームロボットやドローンを利用してみたものの、繭に近づくにつれて原因不明の故障で調査不能との事だった。
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