ある日、白い繭

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 しかし、今日も暑い!すでに私よりも先に来ていた作業員は、全員が私と同じくらいの年齢の女性だ。 苗字は違っていても、みんな私と同じく星菜という名前な事は想像がつく。  大人は記憶が消されたらしいけど、高校生の私はまだ子どもと認識されているらしく、昨日ここに来た事も一昨日の事も覚えている。きっと、他の作業員も同じなのだろう。  近づいて見上げると、周囲の木々よりも背丈があるから、とても大きいと思う。 自分の目線あたりの眉を触ると、鶏卵の表面よりもツルッとしていて、少しひんやりしている。それなのに、ハンマーでコンコンと叩いてみても、傷ひとつ付かない。  もうひとつ不思議な事がある。 この白い繭が現れてから、この周囲のソメイヨシノの蕾は、夏になったのにまだ咲きそうにないという事だ。  でも、不思議と恐怖は感じない。  ほんと、これなんなんやろね。   それにしても、暑いなぁ。腰に付けている中身が凍っていたはずのペットボトルは、すでに半分くらいが水分になっている。それをまずは額、次いで首筋にあててから、キャップを開けてゴクゴクと飲むと、身体の熱が少し下がったように感じる。  夏の太陽熱って、本当に凄い。  それから、いつものように、白い繭が熱を持っていないか、色は変わっていないか、硬さに変化はないか等々。その辺を確認しながら、タブレットのチェック項目にレ点を入れていく。 
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