ある日、白い繭

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 一通り見て回って、今日も何も変化がないことを確認してから、白い繭に両手で触って、目を瞑って、『また明日来るよ』と心の中で呟いた。  目を開けて、振り向きながらヘルメットを被り直したその時に、足元の草に足を取られて、私は後ろに倒れそうになった。慌てて態勢を整えようとして、寄りかかった際に、右頬と唇を白い繭に軽くぶつけてしまった。 「痛ったーい!」  思わず、比較的大きな声で独り言を放ったのだけど、少し恥ずかしくなって周囲を見回して、近くには誰もいない事を確認してホッとしていた。  ズボンのポケットから、鏡を取り出して自分の姿を映してみると、唇の右端を少しだけ擦りむいた事がわかった。 「これ、傷跡が残るとどうしよう……」  そう思うと、気分がずーんと落ちてくる。さらに、じわじわと鳴くセミの声が思考を一瞬ストップさせる。  でも、ずっと聴いていると、なんとなく私に『元気出しや!』と盛大に合唱しくれているようにも感じて、ちょっとだけ前向きになれた。  そうよね。気にしてたってしょうがない。こういう時は、まずはちゃんと食べないとね。家に帰ってお昼ご飯にしよう。
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