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若頭のα×αが嫌いな不憫Ω
治安が悪いネオン街のスーパーにまだ幼い弟の凛と僕、美咲依兎の2人で夜ご飯を買いに来た
あたりは街灯とスーパーの電気だけで薄暗く重重しい雰囲気がある
「お兄ちゃん、今日、何を買いに行くの?」と弟から聞かれた
いつも、パンとおにぎりで飢えをしのぎ、特別な日にお弁当を買いに行くから、きっとその質問
今日はいつもと同じ日だからパンかおにぎりと言いたいところだけど…3ヶ月ぐらいお弁当を食べていないので奮発して「ん~お弁当かな!」と言うと目を輝かせて「やったぁ!!!」と弟が飛び跳ねる
2人で軽くステップを踏みながら歩きスーパーに辿り着いた
入口に入ろうとした瞬間、男の人が「おっ、美咲さんのところの息子じゃないか」とニヤニヤしながら僕たちの前に来た
この男は母親の借金取りのヤクザ
「ここに来たってことは金は溜まったってことかなぁ?」
「いや…その…」
「そんな小さな声で言ったって聞こえねぇよ!!!弟を売りに出されたくなけりゃおめぇが体で働いて金を渡してくれたっていいんだぜ?」と言われた
「いや、それは出来ないです」と今度はさっきより大きなで言った
「お前たちに餓死しろなんて言わねぇ。だけどなぁ、借りたものはきっちり払わねぇと食べたいものも食べれねぇんだぞ。そこんとこわかってんのか?あぁ?」と怖い顔を僕に近づけて言ってきた
「はい…」
「んで、いくら入ってんだ?金」と男は手を僕の前に出して金を出すように要求してきた
母親から必死で奪ってきた2000円を渡すまいと「ないです!」とキッパリ言ったが「スーパーまで来て金がねぇってどういうことだぁ?金がねぇって盗みに来たのか」と言われ「ち、違います!!」と否定するけど「じゃあ、持ってるよな?」と言われて仕方なくカバンの中に手を入れて2000円を出そうとしたら「とろとろしてんじゃねぇよ」と言われカバンごと持ってかれた
男はカバンの中身を見て「2000円って舐めてんのかぁ?」と怖い顔がさらに怖い顔になり、殴られそうになって咄嗟に弟の手を握って逃げてしまった
あぁ、なんて馬鹿なことをしてしまったんだろう
逃げ足なんか、敵わないのに…。と思いながら死ぬ気で走り何とか離れたけど、結局裏道の細い路地で捕まってしまった
「逃げようだなんて…生意気な小僧が…」と殴ろうとした瞬間借金取りの後ろから体格が僕の倍近くあるんじゃないかと思うくらいの男の人が出てきて借金取りの男の拳を止めた
「お前の相手はその子じゃない。俺だ」と言うと借金取りの男は振り返り大柄の男を見ると固まって「お、覚えとけよ!」と言うありがちなセリフを言って去って言った
僕は助けてくれた大柄な男に「ありがとうございました」とお礼を言って弟を抱き抱えて家に帰ろうとした時「ちょっと待て」と引き留められ、嫌な予感がしてまた走ってしまった
少し走るとスーツ姿の怖い顔をした男の人たちに囲まれて後ろからはさっきの大柄の男性の人が来ていて逃げ場がなくなってしまった
「お、お礼は言いました。お金ももうありません」と半泣きになりながら言うと大柄の男が「金も要求したりしない。礼もいらない。ただここがどこだか分かるのか?家に帰れるのか?車があるから送ってあげれるけど、どうなんだ?」と聞かれた
確かにここがどこだか分からない。足も疲れてしまったし…。
男の人を信じていいのか分からない。だけど、弟を抱っこして歩くのは正直辛い。けど、助けてくれた人だし…きっといい人だよね…この人が悪い人だったとしても僕だけが捕まればいい話。そう思って「帰れません。お願いしてもいいですか?」と言うと「わかった。着いてこい」と言い歩き始めた
弟を抱っこしてついて行く
こ、これが正解だったのかな…
拉致されたり!?いや、悪い人ではない気がする…助けてくれたし…と言い聞かせながらついて行くと黒塗りの高級車の前で立ち止まった
助けてくれた男の人がドアを開けてくれた時、弟が「ねぇ、お兄ちゃん!あの、前の車に乗りたい!」と指さして言った
「ダメ!お兄ちゃんと一緒に乗ろ!」と言うと「いや!メガネかけたお兄ちゃんがいいのっ!」と駄々をこね始めた
そんなに駄々こねる子じゃなかったのに…と困ってると助けてくれた男の人が「わかった。そっちの車に乗せてやる」と言ってメガネをかけたお兄さんを呼びつけ弟を引き渡した
「ごめんなさい。そんなにわがままを言う子じゃないんですけど…」と言うとメガネをかけたお兄さんは「大丈夫ですよ」と言って戻って行った
僕はそれを見届けて車の中に入った
助けてくれた人も車の中に入って発進した
程なくして助けてくれた人話し始めた
「なんで、お前を助けたと思う?」
えっ?ただ単に人助けじゃないの…?
「人助け…じゃ…ないんですか?」と言うと「ハハッ…まぁ、人助けもある。他の理由の方が大切だな」
「や、やっぱり拉致…で…ですか?」と恐る恐る聞くと「拉致では無いな」言った
では無い?それ以外の怖いことだったらあるって事?で、でも順調に家の方に向かってるし…しかも、もうすぐで着きそう
「思いつかないか?」
何回頭を回転させても僕の小さな脳みそでは思いつかない
「は、はい」
「君…いや…美咲 依兎が運命の番だからだ」
う、運命の番!?
そ、そんなの都市伝説であって…う、嘘だ…
運命の番なんて…僕には…
とりあえず嘘だけどオメガじゃないってことを伝えないと…
「な、何言ってるんですか!僕はオメガじゃなくてベータなんですよ!首輪だって着けてないし」
本当はお金が無くて買って貰えないだけだけど
「今までの人達だったらその嘘で通用するかもしれないが、運命の番は誤魔化せない。実際、依兎も気がついていたんだろ?」
着いてきちゃダメって脳内ではわかってたのに本能で着いてきてしまったってこと…?
た、確かに…車に乗った時から妙に発情期と似たような少しドキドキした感じはあったけど…と考えていたら車が止まった
「と、とにかく!僕は運命の番なんて信じません!この空間にいても発情しないんだから!」と捨て台詞を言ってドアを開けようとした時、反対側の腕を握られて引き寄せられて耳元で「おやすみ…俺の運命の番」と囁かれた
「う、運命の番じゃないです!」と言って車から出ようとした時「また会おう」と言った声が後ろからしてきて、運命の番じゃないのに会おうとしてくるのがムカついて、音を立てながらドアを閉めてやった
運転手さんは私が閉めようとしたのに…としょんぼりした顔で戻って行き、車は発進した
いつの間にか隣に弟が居てごめんなさいと申し訳なさそうに謝っている
なかなかわがままを言わない子だから仕方ないってことで許してあげた
家に帰ろうと歩き出した時ポケットに違和感があった
なんだろう?と不思議に思いポケット何かが入っていたので取り出すと、名刺が入っていた
「神崎ホールディングスのC…E…O?神崎 奏斗さん?」
よく分からぬまま、家に帰って寝て、次の日、弟と一緒に学校に行こうと玄関を開けると昨日のメガネのお兄さんが立っていた
「おはようございます。依兎様、凛くん」
「お、おはようございます」
「依兎様は高校へ、凛くんは小学校ですよね?」と聞かれたので間違っていないから「はい」と答えた
「では、一緒に登校いたしましょう。着いてきてください」と言って部屋から出される
「あの。ちょっと待ってください!僕たち歩いて行けますし…な、なんであなたが送る必要があるんですか?」と聞くと「・・・あのお方の命令なので仕方ないんです。すみません」
あのお方ってまさか…
「その人って昨日の…?か、神崎…」
「奏斗社長ですね」
そうそう…奏斗さん、CEO?だったけ?僕には縁もゆかりも無い世界の多分偉い人なんだろう
「その社長さんと、昨日知り合ったばっかりで迎えに来るって…少し…ごめんなさい、送りは結構です」と断るけど「昨日だってちゃんと送り届けましたよね?大丈夫です!ちゃんと送り届けますから!神崎社長もいらっしゃりません!」と言われたけど、さすがに怖いので、ごめんなさいと再度断って凛と一緒に学校へ向かった
凛は残念そうにしていたけど仕方ない。αとは関わっちゃいけない
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