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「兄ちゃん、たこ焼き売るん手伝ったろか? 」
どこからかひょうひょうと現れた男は、のんきな口調でそう言った。
池光隼斗は出来たてのたこ焼きをパックに詰める手を止め、ゆっくりと顔を上げる。
目の前には、ライオンのたてがみのように金髪を逆立てた男が、人懐っこい笑みを浮かべて立っていた。
耳には小さなピアス、首元には小さな鎖のようなネックレス。
そして、だらりと大きめのTシャツ。
近づきがたい風貌なのに、表情はどこか人懐っこい。
(なんだこいつ……)
もしかして、からかわれているのだろうか。
隼斗は無視して、再びたこ焼きをパックに詰めはじめる。
そして淡々とした口調で
「1パック550円です。2パック1000円です」
と、言った。
隼斗の無愛想な返事に、男が怒った様子はない。
むしろ拍子抜けした顔で隼斗をまじまじと見つめてきた。
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