たこ焼きにも砂糖をください

6/13
前へ
/13ページ
次へ
「は…」 「なんかオマエ腹立つなあ」 「と言われましても…」 「金出してんのはこっちだ。出すまで待つかなんかしろや」 ああ、怒ったのはそのせいか、と隼斗はここでやっと男が怒った理由を理解する。 しかし接客をしている最中に、次の業務を行うのはめずらしいことではない。父や兄もやっているし、行列ができるような人気店ならなおさらだ。 そんな当然の流れが癇に障ったのだとしたら、よほど自分の態度が悪かったのだろう。 「焼いた方が効率いいので」 「客もほとんどいねーくせに、何が効率だっつの! 」 「こちらのことに口出ししないでください」 「うるせークソが!」 男は、バンッと、屋台の壁を勢いよく蹴った。 器具や材料が倒れ、作り置きしていたたこ焼きのパックが地面に落ちた。 しかも、驚いて身体を動かした勢いで隼斗の指が高温の鉄板をかすめる。 「っ!」 「ざまあみろ」 「あなたが勝手に怒り出したからで…」 「あ? オマエ、いい加減にしろよ。そんな生意気な態度で、商売できると思ってんのか!」 男は低く声色を変え、憤りを訴えるように囁いた。 隼斗の方も怒りが抑えきれず、一触即発の状態だ。 ーーその時、 「おい、何やっとるんや!」 焦りと怒りの混じった甲高い声が、どこかから、人ごみをかきわけて矢のように飛んできた。 この声、聞き覚えがある。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加