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 太陽には約100億年の寿命があるそうだ。その寿命がそろそろ尽きるとの速報が入って来たのは、今から50年前のこと。まだ私が生まれる前の話だった。  太陽が死んだら、地球が急激に冷えてしまい、生命を維持することが困難だそうだ。  太陽が死ぬことが分かった後に生まれた私は、生まれた時からあと何年生きられるかが決まっているようなものだった。高校を卒業できるけれど、大学生にはなれない。そんな悲しいことがあってもいいのだろうか。  どうして私は生まれたのだろう。未来を生きるためじゃないのなら、どうして。  理科の授業で何度も言われた。太陽はあと数年で死ぬ。太陽が死んだら、太陽の温度が低くなって体積がどんどん大きくなる。太陽の核の部分だけが残り、白色矮星となって一生を終える。  地球の温度は-200℃にもなるらしい。そんな温度では生命は到底生きられない。人間は滅びるのだ。人間だけじゃない、その他の動物も皆。  そして今日もまた、同じ話を延々と理科の授業中にされていた。太陽の寿命がどんどん短くなっていくほど、先生はその危機感を煽るように授業で口にする。お前たちは長くは生きられない、という絶望をそこまでして感じさせたいのだろうか。  そんな話をされたって、とても現実味を感じなかった。-200℃なんて温度、想像がつかない。でもそんな気温に達していなくても雪が降っているのだから、-200℃になった瞬間猛吹雪になるんだろうなぁということだけは想像ができた。  滅びた人間は、猛吹雪によってあっという間に覆われて、存在ごと消されてしまうのだろうな。  外は雪が降っていた。
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