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 冬も昔ほど暖かくはないらしい。北海道や東北がマイナス何度の世界で、東京なんて滅多にマイナスの気温にならなかったのだそう。今は太陽の燃える力が弱まっているせいか、マイナスの気温なんて都内でも当たり前だ。北海道なんてもっと寒い。ニュースを見ただけで体が震える。  昔は雪でも外で雪合戦したり、雪だるまを作ったりしてはしゃいでいたけれど歳を取るうちにそんな気も失せていた。とは言っても、まだ中学2年生だから全然若いけれど。  全然若いけれど、あと少しで死ぬのだ。  こつ、と手に何かが当たった気がした。私は窓の外から手元に視線を移すと、手の近くに知らない消しゴムが置かれていた。隣に座る柊吾(しゅうご)、いや御崎(みさき)のだ。ふと御崎の顔を見ると、御崎がこっちを見ていた。久しぶりに御崎の目を見た気がする。  御崎がノートをずいっと出してくる。無駄を一切省いた洗練された字がノートに書かれていた。 『なに黄昏てんの』  ぷっと御崎が笑う。私は『別に』と御崎のノートに殴り書きをした。  御崎柊吾は小学校からの幼馴染だ。家も近くて、小学生の時はよくお互いの家に遊びに行っていた。昔は柊吾って呼んでいたけれど、中学生に上がって男女間に壁ができ始めて、向こうの呼び方が苗字呼びになって、こっちも自然と柊吾から御崎呼びに変わっていた。一緒に帰らなくなった。それからあんまり学校で話さなくなって、いつしか疎遠になった。  けれど中学2年生になって小学校ぶりに同じクラスになって、しかも理科の授業では隣の席になった。久しぶりにこうしてコミュニケーションを取った気がする。 『本当に太陽って死ぬのかな』
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