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あっという間に一ページ埋まってしまった。御崎は真っ新なページに変えると、さらさらと綺麗な字で文字を綴っていく。
『でも受け止めないとなんだよな』
『反発しても自然には勝てねぇし』
『後悔しない生き方をするしかねぇよな』
キーンコーンカーンコーン。はい、授業はここまで。先生がお決まりの文句を言って、理科室は賑やかになった。その日の最後の授業ということもあり、皆「帰れるー!」と嬉しそうに言っている。御崎も友達がやってきたのと同じタイミングでノートを閉じて、私も帰り支度の準備を始めた。
先ほどの会話なんてまるで無かったかのように、いつものように壁が出来上がる。
「なぁ柊吾ー、今日帰り俺ん家でゲームしようぜ」
「いやー、今日パスで」
「何だよーなんか用事?」
「うん、まぁ。後悔したくないからさ」
私は教科書等を抱えて立ち上がると、「鼓!」と呼ばれた。理科室が一斉にしーんとなる。私は驚いて目を丸くした。
「今日一緒に帰ろうぜ」
予期せぬ言葉に固まる。周りにいた女子たちは皆喜々とした様子でその場を眺めていた。
「え、な、なんで?」
「何でって、俺ら幼馴染だし。別に良くね?」
周りが私の返事に耳を傾けていた。
「あ、わかった……」
「よっしゃ。俺今日日直だから、ちょっと教室で待っててくれない?」
「あ、うん」
「ありがと」
御崎はそのまま友達と一緒に理科室を出ると、すぐに女子生徒が私の所に駆け寄ってきた。一斉に言われたので何ひとつ聞き取れない。とにかく私もまだ何が起きたのか分からなかった。
太陽が死ぬまであと数年。後悔したくないからさ、という御崎の言葉を反芻した。
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