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「ごめん、お待たせ!」  日誌を提出した御崎が急いで教室に戻ってきた。「行こっか」と言って先を歩き始める。私も御崎の後をついて行った。御崎はどうして今日一緒に帰ろうと誘ってくれたのだろう。また昔みたいに仲良くしたいから?  先に香林なんて呼んできたのは向こうなのに。向こうから壁を作ったのに。勝手な人。 「鼓、さっきから何で後ろ歩いてんの」  御崎は私の腕をぐいっと引っ張ると、御崎の隣に立たせた。私はなんて反応していいか分からず、硬直する。 「何で、今日一緒に帰ろうなんて言ってきたの……? それに鼓呼びだって──」 「ごめん」  御崎が立ち止まった。私もつられて立ち止まる。御崎の思いがけない言葉に私は目をぱちくりさせる。御崎はもう一度私のことを見て「ごめん」と言った。 「俺の方から壁作ったのに、こうしてまた一緒に帰りたいとか鼓って呼んだりとか俺すげぇ嫌な奴だよな」 「……いいよ、別に。先にやられてなくても、私もきっと柊吾じゃなくて御崎呼びになってただろうし」  沈黙が流れた。普段は部活動で騒がしい放課後も今日は雪が降っているから、静かだった。  御崎が歩き始める。私の歩幅に合わせて歩いてくれる御崎のあとを追って、私も隣を歩く。 「俺さ、後悔したくないんだ」 「……もうすぐで死ぬから?」 「うん。だから後悔したくない。生きてる間に少しでもやりたいことやって、後悔をゼロにして死にたい。って考えてる割に動くの超遅いけどな」  御崎がわははっと笑う。確かに今私たちは中学2年生で、それももう終わるし、来年度は受験で動けないも同然だし、そしたら残すは高校3年間だけ。あっという間だ、そんな時間なんて。
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