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 靴箱で上履きからスニーカーに履き替えると、私は鞄から折り畳み傘を取り出した。外に出て傘を開く。真っ赤な傘を上に向けると、一瞬で大粒の雪で赤色が埋まったのが分かった。傘の範囲だけ暗い。 「……みさき……柊吾はさ、私とまた仲良くなりたいって思ってるから今日誘ってくれたの?」  こくりと柊吾が頷いた。私は「そっか」と言って、さくさくと雪の上を歩いて行く。あんなに沢山の生徒がこの道を通って家に帰ったというのに、その道は誰も歩いていないかのように足跡一つも無かった。 「でもそれだけじゃない」 「何?」 「……鼓さ、どこの高校受験するの」 「第一志望は春山第三高校」  春山第三高校は最寄り駅から一時間ほど離れた場所にある公立高校だ。自分の学力的にも丁度良いと思ったし、何より公立だし、憧れていたセーラー服が制服ということもあって即決だった。中学はブレザーだったからセーラー服にずっと憧れていたのだ。 「俺も春山第三にしようかな。家族には迷惑かけたくないし公立がいいんだけどさ、具体的にどこがいいとかなくて」 「……柊吾ならもっと上を目指せるんじゃない? 頭良いし。公立だったら木蓮とか山下とかもあるし」  柊吾が黙る。私はちらっと柊吾の様子を窺った。 「柊吾?」 「俺、鼓のこと好きなんだよね」  私の口から「え……」と言葉が零れ落ちた。柊吾が真っすぐに私のことを見つめて「好き、なんだ」と言う。 「だから鼓とまた仲良くしたいし、何なら同じ高校にも行きたいんだ」
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