ママ、もういちど笑ってよ

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「あー、おいしかった」 「お腹いっぱい」 体がぽかぽかして寒さが薄らいでいく。その温かさが心地よくて休んでいると、和貴さんがポケットから何か取り出した。それが何であるかも確かめる間もなく、彼が真顔で居ずまいを正した。 「未紗さん」 「…はい」 「僕をこの家のお父さんにしてください」 そう言って彼はベルベットの小箱を私に差し出した。 箱の中身と彼の言葉が繋がらなくて、私はぽかんとした顔で彼を見つめていたと思う。 「えっ。和くんがパパになるの?」 「一緒に住むの?」 私より先に佑と智が声を上げた。和貴さんは少し戸惑いながらも、二人の顔を見て頷いた。 「皆が仲間に入れてくれるなら」 「やったあ! パパだ」 「ママ、和くんのこと大好きだもんね。よかったね」 佑の言葉でようやくプロポーズなのだと認識する。 驚くやら恥ずかしいやらで、嬉しさよりもおかしさがこみ上げてきた。彼も照れくさそうに笑った。 「ムードなくてごめんね。一番大切なことを伝えたかったから」 「ううん。嬉しかった。ありがとう」 改めて指輪を私に()めてくれた。 マット加工されたプラチナのリングは、光にかざすと粉雪みたいに煌めいた。子どもたちも嬉しそうに私の左手を見つめ、佑が和貴さんにぎゅっと抱きついた。 私にとって子どもの幸せが一番の願いだ。それを尊重してくれた彼の優しさを、これからもずっと子どもたちに伝えていきたいと思った。 今年は皆でスキーに行こう 新しい楽しい想い出を たくさん作ろう 来週は早くも雪の予報が出ていた。 冬はすぐそこまで来ている。
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