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雪に悲しい記憶が被るようになったのは3年前のことだ。今でも冬になると、あの日のことを思い出す。
私は雪が降りしきる中を歩いていた。
未明からずっと降り続けていたせいで、地面もアスファルトも白で埋め尽くされ、ぼたん雪はしんしんと周りの音を奪って積もっていく。
佑を両腕に抱え、生まれたばかりの智をおぶって、私は暗い夜道をひたすら駅へ向かって進んでいた。
傘を差せないから3人とも帽子をかぶっていたが、次々に顔に張りつく雪は私の頬や睫毛で溶けていき、時折、視界がぼやけてくる。歩みを止めたら凍って動けなくなる気がして、佑を揺すり上げてまた次の一歩を踏みしめた。
1歳を過ぎた佑が、言葉は話せなくても意思を表すようになると、夫は佑にきつく当たるようになった。男の子はやんちゃで落ち着きのない生き物だという認識だった私は、夫の急な変貌に戸惑った。
それでも、年子で生まれたまだ頼りない智を嬉しそうに抱き上げる夫に、少しだけ安心もしていた。
初めから完璧な親なんていない
少しずつ出来るようになればいい
その考えは、決して間違ってないと思っていたのに。
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