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帰りに夕飯の買い出しでスーパーに寄った。
「寒いから豚汁にしようか」
「じゃあ、お肉多めで」
「こんにゃくも」
「渋いなぁ」
お店や車の中で交わされる会話は、もう立派に家族のそれだ。食材を抱えて私たちが住むアパートに戻ってきた。
「寒かったー」
遊んだ後の高揚がまだ残る子どもたちは、アニメソングを繰り返し口ずさみながら、手を洗って着替えた。
「お。いいものがある」
和貴さんが遠足で二人が掘ったさつまいもを見つけた。豚汁は少し甘くなるが、この季節にはぴったりだ。
彼が子どもたちに包丁の使い方を教えながら、皆で手分けして材料を切っていく。
『ちゃんと扱えば危なくないよ』
小さな手で刃物をぎこちなく持っていると、つい心配になってしまうが、彼はそんな私を笑い飛ばす。
「猫の手、上手になったでしょ」
「うん。すごいすごい」
招き猫みたいなポーズで佑がおどけると、和貴さんがその頭を撫でてくれる。智も負けじと自分の切った野菜を見せつけてきた。
大きめのお鍋で豚こま肉を炒めて、切った野菜を順番に入れていく。葱、大根、人参、さつまいも、蒟蒻。
水を張って出汁パックを放り込む。
「手抜き」
「僕も使ってる。結構いけるよね」
和貴さんが笑う。
煮たってきたらアクを掬って、味噌を溶き入れたら出来上がりだ。その間に残りご飯を温めて小さめのお握りを作った。
「いただきます」
テーブルの周りに味噌の香りが漂う。
外で冷えた体が豚汁の熱で中から温められる。
誰もが無言で食べていると、佑がほうっと息をついた。
「あっちい」
パーカーを脱いで、Tシャツ1枚でまた丼に向き合った。額に滲んだ汗を、私はタオルで拭ってやった。
智と和貴さんは腕まくりしている。
3人が同じような姿勢で丼と格闘している、その光景をずっと見ていたいと思った。
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