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公園でお昼を食べ終えた子どもたちが、またボールを持ち出してサッカーを始めた。後片付けが済むと和貴さんが私にコーヒーを手渡して、レジャーシートに座った。
「ご馳走さま。いつもありがとう」
「半分は残り物だからね」
佑と智は芝生の上でパスを交わしている。
私もその姿を見ながら彼の隣に座った。
小春日和の陽射しは気持ちいいが、朝夕はだいぶ冷えるようになった。
「また冬が来るんだね」
「こないだ、佑くんから聞いたんだけど」
彼が思い出したように話し始めた。
「ほら。あの雪の日の怪我のこと。雪だるまをどうして壊しちゃったのかって」
つらい記憶が戻って来る。暗い夜道を歩いたこと、佑の泣き顔。でも─
この人には 温もりを分けてもらったな
「そしたら、ママは一人で可哀想なのにって」
瞳の奥が熱くなる。
私のこと 心配してくれたんだ
「優しいんだよね、佑くんって。うまく言葉に出来ないから誤解されやすいけど、本当はすごく優しい子なんだよ」
「…うん。ありがとう」
彼の言葉に涙が滲んできた。
彼がちゃんと見てくれてることも嬉しかったが、あんな目に遭っても佑は優しさを忘れてない。
そのことに私は心から安堵した。
涙を拭う私の肩を、和貴さんがそっと抱きしめた。
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