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「いただきます」
「い、いただいます……」
「いただきます。ねえ、昭はその仕事が落ち着いたらお休みが入るんでしょ?」
「ん、そうだね」
おむすびを一口、口に含み咀嚼をして飲み込んでから昭は幸乃の言葉に返事をする。
「だったら、その休みの間にさちさまとお出かけなんてしたらいいじゃない。まだ相手のことをなにも知らないだろうし、ずっと屋敷の中だけを紹介していてもつまらないじゃない。外には楽しいがたくさんあるんだから」
「それもそうだね。どうかな、さちさん」
「え、あ……」
さちが返事を返す前に幸乃がなにかを考えるように、顎に手を添えながら決定事項のように話を進める。
「文さまにも言っておかないとね。お出かけ用のお着物も用意しなくちゃいけないし」
「それはそうだけど……まさか幸乃、一緒に来るんじゃないだろうな」
「え? 私はさちさまの護衛なんだからついて行くに決まってるでしょ」
幸乃のその言葉に昭は手におむすびを持ったまま、座卓の上に音を立てて手を置く。
「なんでついてくるんだ!」
「私もさちさまと仲良くなりたいからよ。それに今後は昭より私の方が同じ時間を過ごすのが多くなるのだから、早く仲良くなった方が昭もいいでしょう?」
「うっ……」
幸乃の言葉に思う所があるのか昭は捻り声を出しながらも、座卓についた手に持っているおむすびを口に含みながら片手で和装綴じされた冊子の貢をめくる。
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