14.一対一

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「――以上です。何かご質問はありますか?」 「いや、ありません。とてもわかり易かった」 高原に真顔で褒められて、私は反応に困る。言葉がつい、どもりがちになってしまった。 「そ、そうですか。も、もし後で何かあれば、ご連絡、ください。大宮からご説明などさせて頂きますので……」 「えぇ、分かりました」 高原は私が渡した資料をまとめると、丁寧にカバンの中に仕舞いこんだ。 無事に終わった――。 肩の荷が下りたような気持ちで、私は高原に言った。 「今日は長時間ありがとうございました。大変お疲れ様でした」 高原は椅子から立ち上がると、カバンに手をかけながら私を見た。 「早瀬さん、この後は忙しいのか?」 高原の口調が元に戻った。そのスムーズな態度の切り替え方に戸惑いながら、私はつい素直に答えてしまう。 「いえ、特には」 「勤務は5時まで?」 「はい」 「そうか、あと30分くらいってとこか。……ところで、帰る時に大木課長に挨拶していこうと思うんだけど」 「分かりました。呼んで参りますので、カウンター前で少しお待ちください」 私は大木の元へ行くと、終了の報告と共に高原の言葉を伝えた。 「ご説明とお手続きが終わりました。高原さんが、課長にご挨拶したいと仰っているのですが……」 「分かった」 大木の機嫌がよくなった。彼は他人からことが好きなのだ。いそいそとした足取りで高原の元へ向かう。 「今日はお疲れ様でした。何か問題はありませんでしたか?」 「えぇ、早瀬さんのおかげですべてスムーズに終わりました。……ところで大木課長。今日この後、早瀬さんをお借りしたいのですが、よろしいでしょうか」 大木は困惑した顔で高原を見上げた。そして私も。 ――いきなり何を言い出すのだ、この人は。 大木が軽く眉根を寄せながら高原に訊ねた。 「どういうことでしょうか?」
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