1.最悪の合コン

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1.最悪の合コン

 週末の居酒屋はがやがやと賑やかだった。  私は今、飲み会という名の合コンに来ている。友人の曳地かおりから、どうしてもと懇願されて断り切れなかったのだ。ちなみに彼女がセッティングしたこの場は、少し前の合コンで気に入った男性とまた会いたいがためのものらしく、主役はあくまでかおりとその男性だ。  二人に加えて私ともう一人の男性がこの飲み会のメンバーだったが、傍から見ればダブルデートに見えなくもない。しかし、そんなに簡単に心惹かれる相手に巡り合えるわけがないと思っているから、私はこの飲み会になんの期待もしていない。  かおりはお目当ての彼、前田信也と、すでに下の名前で呼び合っており、親しげな様子だ。  この飲み会は本当に必要なものだったのかと内心で苦笑しながら、真正面に座る前田の友人である男性にそっと目をやった。彼との初対面を思い出す。待ち合せていた店の前に現れた彼を見た瞬間、私は威圧感を覚えた。  そう感じてしまうほど彼は背が高く、がっしりとした体躯をしていた。その上に乗っているのは女性受けしそうな精悍な顔だったが、表情は固く、にこりともしなかった。  その時の私は、彼が無表情である理由を、会ったばかりだからだと思っていた。  しかし店に入り、ドリンクや料理が並んだ後の自己紹介の時になっても、彼の愛想のない態度は変わらなかった。彼は淡々とした口調で「高原」と名乗ったきり、口をつぐんでしまった。苦手なタイプだった。
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