忘れられない日

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「それってつまり断られたってこと?」 「残念でした」 「絶対、いい人が見つかります」 「こういう断り方ってどうなの」 「まあしょうがないよね、がんばれ」  配信した動画は「ふられた僕をなぐさめる」コメントであふれた。  僕は郷土料理を出す小さな居酒屋を(いとな)(かたわ)ら、店の宣伝と趣味を()ねた動画配信をしている。  僕より5センチ背の高いスタイルのいい女優志望だった彼女は、夢破れてふらりと小さな南の島にやってきた。  贅沢(ぜいたく)ではないけれど、新鮮な食べ物。  たいした料理の腕はないけれど、素材がいいからシンプルな味付けで十分美味しい。  波の音を聞きながらのんびり過ごせば、ささくれた気持ちも波の泡と一緒に消えていく。  そんな、定番でわかりやすい、さえない僕の恋物語は、わずかなフォロワーのかっこうの(ひま)つぶしの餌食(えじき)になった。  
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