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「はい、撤収」
「意外にこの企画、ちょろかったな」
起き上がった僕と彼女はすぐに体を離し、雪を止めた。
今日で動画の配信は終了。
南の島でさえない料理屋を営む僕はいなくなる。
「私たち、何がしたかったんだろう」
真っ白な雪は上昇する気温にぐずぐず溶け、びしゃびしゃの泥になった。
「終わった夢の残骸みたい」
目を背けて呟く彼女。
「ねえ、これからどうするの?」
「また、新しいなにかを始めるさ」
彼女は指輪を外した。
「これもどうせ、借り物なんでしょう? みんなをだましたみたいでなんだか……」
青い空を見上げながら彼女はつぶやく。
「雪だって、本物じゃない。専用液で作られた偽物の雪……」
「レンタル料が一番安かったんだよ。雪が本物かどうかなんて問題じゃない。雪に見えればそれでいいんだから」
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