忘れられない日

7/8

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「はい、撤収(てっしゅう)」 「意外にこの企画、ちょろかったな」  起き上がった僕と彼女はすぐに体を離し、雪を止めた。  今日で動画の配信は終了。  南の島でさえない料理屋を営む僕はいなくなる。  「私たち、何がしたかったんだろう」    真っ白な雪は上昇する気温にぐずぐず溶け、びしゃびしゃの泥になった。 「終わった夢の残骸(ざんがい)みたい」  目を(そむ)けて(つぶや)く彼女。 「ねえ、これからどうするの?」 「また、新しいなにかを始めるさ」  彼女は指輪を外した。 「これもどうせ、借り物なんでしょう? みんなをだましたみたいでなんだか……」   青い空を見上げながら彼女はつぶやく。 「雪だって、本物じゃない。専用液で作られた偽物の雪……」 「レンタル料が一番安かったんだよ。雪が本物かどうかなんて問題じゃない。んだから」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加