第六話 ずっと見てくれてたのに。

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祈くんと別れた私はSNSにカラオケで撮ったソフトクリームを投稿する。 「や、やっぱり……」 一番にいいねボタンを押して来たのは和泉だった。 やっぱり和泉が一番にいいねを押す確率高いんだよね。 私のアカウント、フォロワー数多いのに。 私が投稿したら通知が行くようにしてるとか? 祈くんが和泉の彼女を作らない理由は私なんて言うからすごく気になってきた。 今迄の些細な事のあれやこれやが。 そうだよ、いつも私が彼氏と上手く行かなかったり別れたりしたら和泉が一番に気付いて話を聞いてくれてた。 今迄本性を隠してみんなに優しい和泉くんモードを私にも見せてはいたけど、私をやたら励ますなんてそんな面倒くさい事わざわざ。 それに和泉が冗談でキスするとは思えなかった。 えーい、もう本人に聞いちまえ! ずっともやもやするよりはずっと良い! 「二人三脚の朝練って……お前何急にやる気出してんだよ」 「い、いいじゃん! クラス練習だと女子の羨ましがる目が気になって集中できないし!」 翌日、私は二人三脚の朝練という名目で和泉を呼び出した。 「昨日の合コンで彼氏見つけられなくて体育祭の練習を頑張る事で気を紛らすってか? 付き合わされるこっちの身にもなれよ」 やっぱりこいつが私を好きなんてありえない気がする! 本性出した瞬間私には言いたい放題だし。 「でも、付き合ってくれんじゃん!」 「ま、負けるのだけは絶対嫌だからな。俺、敗北を知らないで生きてきたから」 「いちいちうざいな」 「でも、体育館もグラウンドも部活やってる連中が使ってるぞ」 「お、屋上は⁉︎」 「知らないのか。立ち入り禁止」 「和泉なら権力で屋上開けるくらいできるでしょ」 「ま、この学園で俺に逆らえる教師はいないからな。職員室行くぞ」 「まじで魔王様だな、お前」 和泉の権力を使って屋上に行ける事に。 「はぁ、夢の屋上だーっ! ここから何か叫びたくなるねっ」 「バカが余計露呈されるだけだと思うけどな」 「和泉真尋くんの本性は性悪ナルシストって叫んでやるぅ」 「誰が信じるかよ。俺は完璧に演じてんだぞ、学校で」 「そうだよね。ちょっと前まで優しくて頼りになるみんなのヒーロー・和泉くんって私も思い込んでたわ」 こんな腹黒で口が悪い奴だなんて。 というかそっちの和泉を知ってから前より和泉との距離が近くなったような気がする。
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