第六話 ずっと見てくれてたのに。

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「あ、二人三脚の紐無いっ」 「このネクタイで代用出来ないか?」 「ん? それ、制服のネクタイと違うよね? どうしたの?」 「ああ、拘束する時よ……予備に持ち歩いてんだよ。学校の制服のネクタイずっと同じだと飽きるし、放課後なら指定外のネクタイに変えてもいいだろ」 「今、物騒なワードが聞こえたような」 「気のせいじゃないかな。やだなぁ、夢咲」 わざとらしくいつもの爽やか和泉の顔しやがって。 「も、もしかして……和泉ってそういうプレイを女子にするタイプ?」 「お前の発想もなかなかやばいけどな。しねぇよ」 「あ、ジャージのポッケに入ってた。忘れてた!」 「じゃあ、このネクタイはしまっとくわ」 「そ、そのネクタイを使うのは何となく嫌かな」 「ま、夢咲が拘束されたいなら使ってやらんでも」 「そ、そういう趣味無いからぁ!」 だめだ、和泉に流されてる。 本当は和泉にちゃんと聞きたかったのに。 「はぁ、朝からこんなにたっぷり練習とかだる。この後6時間授業あんだぞ」 「和泉は寝てても満点取れるから良いじゃん」 結局、みっちり二人三脚の練習をしてしまった。 優勝したいからいいけど! 「俺が授業で寝るわけないだろ。大体、クラスの連中に寝顔晒すとか絶対無理だし」 「私には晒すじゃんか。ほら、中学の修学旅行のバスとかガチ寝してたし」 「夢咲は俺の寝込み襲わないだろ」 「いや、普通の女子は襲わないから!」 「襲わなくても写真撮ったりきゃあきゃあ猿みたいに騒ぐから」 普段女子達にすごく紳士に振る舞ってる奴とは思えん! 「私、超信頼されてんじゃん」 「だから、夢咲の隣が一番落ち着く」 「そ、そう」 「で? 本当は何か話があるんだろ」 「はい⁉︎」 「さっきから何か言いたげな顔しかしてない。バレバレ。二人三脚なんて練習しなくても俺らなら勝ち確だし」 「自信すごいな!」 「俺と並走する奴は俺からの圧で早く走れなくなる」 何その怖い話⁉︎ 「和泉には隠し事出来ないなぁ」 「夢咲の事は分かるって。ずっと側で見てきたし」 「まあ長い付き合いだもんねー」 私は和泉の本性ずっと気づかなかったけど! 「で? 話って?」 「あ、あのキスの理由! ちゃんと聞いておかないともやもやするから! モヤモヤ解消してから和泉と二人三脚に挑みたいし!」 キスされたのは許せなかったけど、和泉とはやっぱりちゃんと友達に戻りたいし。 和解してチャラに!
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