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「あ、二人三脚の紐無いっ」
「このネクタイで代用出来ないか?」
「ん? それ、制服のネクタイと違うよね? どうしたの?」
「ああ、拘束する時よ……予備に持ち歩いてんだよ。学校の制服のネクタイずっと同じだと飽きるし、放課後なら指定外のネクタイに変えてもいいだろ」
「今、物騒なワードが聞こえたような」
「気のせいじゃないかな。やだなぁ、夢咲」
わざとらしくいつもの爽やか和泉の顔しやがって。
「も、もしかして……和泉ってそういうプレイを女子にするタイプ?」
「お前の発想もなかなかやばいけどな。しねぇよ」
「あ、ジャージのポッケに入ってた。忘れてた!」
「じゃあ、このネクタイはしまっとくわ」
「そ、そのネクタイを使うのは何となく嫌かな」
「ま、夢咲が拘束されたいなら使ってやらんでも」
「そ、そういう趣味無いからぁ!」
だめだ、和泉に流されてる。
本当は和泉にちゃんと聞きたかったのに。
「はぁ、朝からこんなにたっぷり練習とかだる。この後6時間授業あんだぞ」
「和泉は寝てても満点取れるから良いじゃん」
結局、みっちり二人三脚の練習をしてしまった。
優勝したいからいいけど!
「俺が授業で寝るわけないだろ。大体、クラスの連中に寝顔晒すとか絶対無理だし」
「私には晒すじゃんか。ほら、中学の修学旅行のバスとかガチ寝してたし」
「夢咲は俺の寝込み襲わないだろ」
「いや、普通の女子は襲わないから!」
「襲わなくても写真撮ったりきゃあきゃあ猿みたいに騒ぐから」
普段女子達にすごく紳士に振る舞ってる奴とは思えん!
「私、超信頼されてんじゃん」
「だから、夢咲の隣が一番落ち着く」
「そ、そう」
「で? 本当は何か話があるんだろ」
「はい⁉︎」
「さっきから何か言いたげな顔しかしてない。バレバレ。二人三脚なんて練習しなくても俺らなら勝ち確だし」
「自信すごいな!」
「俺と並走する奴は俺からの圧で早く走れなくなる」
何その怖い話⁉︎
「和泉には隠し事出来ないなぁ」
「夢咲の事は分かるって。ずっと側で見てきたし」
「まあ長い付き合いだもんねー」
私は和泉の本性ずっと気づかなかったけど!
「で? 話って?」
「あ、あのキスの理由! ちゃんと聞いておかないともやもやするから! モヤモヤ解消してから和泉と二人三脚に挑みたいし!」
キスされたのは許せなかったけど、和泉とはやっぱりちゃんと友達に戻りたいし。
和解してチャラに!
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