第六話 ずっと見てくれてたのに。

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「突然あんな事したのは謝るよ。悪かったな」 「何? もしかして疲れでいつもより私が可愛く見えてノリでしちゃった的なー? 大丈夫、大丈夫! ちゃんと忘れてあげるから」 「は? 忘れる?」 「お互い気まずいのは無しに……」 「忘れさせてたまるかよ」 「和泉?」 わざとらしく茶化す私と違って和泉は真剣な表情をしている。 「お前がいつまでたっても俺を見ないから向かせてやったまでだ」 「な、何言ってるの?」 「あのキスは相手がお前だからした。それだけだ」 「だ、だからノリなんじゃ?」 「俺はノリで簡単に誰とでもキスはしない」 「そ、それじゃあ本気のキスだったって事?」 「お前が鈍すぎるのが悪いんだからな、夢咲」 「ま、待って。頭が追いつかない! 和泉は私の事が好きって事……?」 「そうだ。俺は夢咲の事がずっと好きなんだ。だから忘れさせてたまるかよ。あのキス」 「も、モヤモヤ解消は出来たけど……」 結局和泉と関わる度、意識するという状況は変わらないじゃん! 「まだピンと来てない顔してやがんな。もう一回してやろうか? キス」 「もう絶対させないっ!」 「顔すげぇ紅いけど」 「だ、だって和泉はずっと私にとって友達だったから」 友達から告白された事は今迄無かったから。 しかも一番信頼している男友達だし。 「分かってるよ。ま、夢咲は最終的に俺を選ぶしかないだろうけど」 「何でよ!」 「昨日の合コンだって、俺を見つけて安心した顔してたし」 「し、してないし!」 「それに、もう容赦はしないから」 「どういう事⁉︎」 「ガンガン攻めていく」 「わ、私……さっき一応振ったんだけど」 「言っただろ? 俺に敗北はありえない」 本当に和泉が私の事を好きだったなんて。 というか私は今迄学園の王子様を蔑ろにしてたって事⁉︎ 情報だけ見たら私が最低な悪女みたいだ⁉︎ 「ごめんなさい。今迄私は和泉の気持ちにずっと気付かず……何なら振られた時にやたら励まして貰ってたし」 「俺の偉大さが分かったか」 「だからカラオケにも来たんだね。私が誰かにとられないかって焦って」 「そ、その言い方やめろ! 別に焦ってなんかない」 「ずっと私を好きでいてくれてありがとう! 和泉っ」 私は和泉の手を取り感謝した。 「はぁ?」 「気持ちは嬉しかったから」 「ふん。油断してるのも今のうちだからな」 和泉の本性を知った時よりも動揺している。 私がずっとあの和泉真尋に片想いされていたという事実。 これから私達は今迄通りじゃいられなくなるんだ。
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