第七話 学園の王子様が迫りまくってくる件

2/10
前へ
/72ページ
次へ
「祈くんに話して良かったよ。私の現状を分かってくれる人が一人はいて欲しいから」 「でも、本当の本当に真尋くんに気持ちが無いんです?」 「そうだね。告白されたら多少は意識するけど!」 「友達が好きな人に変わる事はないんでしょうか?」 「なくはないと思うよ? 私の友達にも友達から彼氏になったって人いたし!」 「じゃあ、真尋くんの行動次第では分からないって事ですね」 「まあ、確かに奴は諦めないって言ってたけど」 でも、そう簡単に好きになるとも限らないし。 私みたいな変な女よりもっといい女、和泉の周りにはたくさんいるのになぁ。 「真尋くんは強い人ですよね」 「確かにあいつのメンタルやばいかも」 私には一人の誰かをずっと想い続けるなんて無かったから。 彼氏と別れてもそんなに引きずらないくらい一途になりきれてなかったなと和泉の話を聞いて実感した。 「僕は真尋くんのそういうとこすごいって思います。学校ではずっと周りから愛される学園の王子様を演じ切り、常に何かにおいて完璧で夢咲さんの事もずっと想ってて。見せないだけできっとお辛い瞬間はたくさんあるんでしょうね」 「そ、そうだよね」 和泉は一切辛いとか悲しいとか言わない。 だけど、私に振られた時の顔は確かに傷ついた顔をしていた。 和泉のあんな顔滅多に見た事無かったから申し訳なくなる。 かと言って和泉を避ける事はしたくないし、出来れば今迄通りに接したい。 友達が自分に片想いしている人に変わるのって難しい。 「僕はすごい人と同じ人を……」 「祈くん?」 「話してくれてありがとうございます」 「あ、祈くんも相談したい事があればいつでも! 好きな人できたら教えて欲しいし!」 「わ、分かりました」 「祈くんとももっと仲良くなりたいからねっ」 「夢咲さんはずるいお人です」 「へ?」 「そういう発言、男子に軽々しくするのは危険ですよ」 「祈くん?」 「勘違いされないようにお気をつけくださいね」 いつも穏やかで優しい祈くんにしては珍しく強い口調だった。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加