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「もう一つ、実家に戻ったとは思わないで友人の家に泊まっていると当てたのはなぜ?」
「静森さんは、簪は実家から引っ越す時に、荷物にまぎれこんだのかもしれないと言っていた」
言った。
確かに言った。
だけど、それが何?
「実家から引っ越して一人暮らしをしているということは、実家は大学から遠い場所にある」
「私、大学生だなんて、一言も言っていないと思うんですが」
「あんな時間にうろうろしていたのだから、社会人ではないだろう。それに、雰囲気が会社勤めをしたことがないように見えたから。ああ、勘違いをしないでくれ。今のは別に悪い意味で言ったのではない」
悪い意味でないなら、どういう意味ですか?
つまり、まだ社会を知らない世間知らずの子ども、だと思われたのか。
確かに強引に簪を押しつけて逃げたのは、大人げない行動だったと反省している。
それにしても、とんでもない観察力だ。
霊能者ではなく、本当は探偵ではないのか。
実はこの店は骨董屋と見せかけて、探偵事務所だったりして。
「それで、先程言った女の霊だが。この簪を持つようになってから視えるようになった」
紗紀は頷く。
「そもそも静森さんは霊感体質。子どもの頃から普通の人には見えないものが視えた」
「そうなんです。私、霊感があるんです!」
紗紀は思わず身を乗り出した。
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