2 骨董屋『縁』

1/19
前へ
/73ページ
次へ

2 骨董屋『縁』

 暎子の助言で簪を売る決意をしたものの、実際どこに持っていけば売れるのかと紗紀は迷っていた。  町でよく見かけるリサイクルショップで引き受けてくれるのかな。  しかし、この簪が、そういうところで売れるかどうか分からない。それに、なぜだか分からないが、心のどこかで簪を売ることに躊躇いを覚えているのもあった。  そんなことを悩みながら二日が経った日、大学の帰りに駅から自宅へと向かう途中のいつもの道が、ガス管工事のため迂回するよう交通誘導係に指示され、紗紀は裏道へと入っていった。  大通りから一本それたその道は、普段なら絶対に歩かない道で、狭くて寂しい感じもしたが新鮮さはあった。  へえ、こんなところにお洒落な雰囲気のカフェがある。  わあ、雑貨屋さんだ。  今度ゆっくり覗いてみよう。  気になるお店をいくつか見つけ、胸を躍らせていた紗紀はふと一軒の店の前で歩みを止めた。  扉の横にかかげられたプレートには、骨董屋『縁』という文字が書かれていた。 「えん? えにし?」  店の名を呟き、紗紀はガラス越しに店内を覗き見る。  骨董屋というからには、埃をかぶった古くさい品物がごちゃごちゃ所狭しと並べられ、暗い雰囲気が漂う場所を想像していたが、店内は意外にも洒落ていて、若い人が好みそうな品物も扱っているようであった。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加