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2 骨董屋『縁』
暎子の助言で簪を売る決意をしたものの、実際どこに持っていけば売れるのかと紗紀は迷っていた。
町でよく見かけるリサイクルショップで引き受けてくれるのかな。
しかし、この簪が、そういうところで売れるかどうか分からない。それに、なぜだか分からないが、心のどこかで簪を売ることに躊躇いを覚えているのもあった。
そんなことを悩みながら二日が経った日、大学の帰りに駅から自宅へと向かう途中のいつもの道が、ガス管工事のため迂回するよう交通誘導係に指示され、紗紀は裏道へと入っていった。
大通りから一本それたその道は、普段なら絶対に歩かない道で、狭くて寂しい感じもしたが新鮮さはあった。
へえ、こんなところにお洒落な雰囲気のカフェがある。
わあ、雑貨屋さんだ。
今度ゆっくり覗いてみよう。
気になるお店をいくつか見つけ、胸を躍らせていた紗紀はふと一軒の店の前で歩みを止めた。
扉の横にかかげられたプレートには、骨董屋『縁』という文字が書かれていた。
「えん? えにし?」
店の名を呟き、紗紀はガラス越しに店内を覗き見る。
骨董屋というからには、埃をかぶった古くさい品物がごちゃごちゃ所狭しと並べられ、暗い雰囲気が漂う場所を想像していたが、店内は意外にも洒落ていて、若い人が好みそうな品物も扱っているようであった。
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