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1 呪われたかんざし?
静森紗紀は机に頰づえをつき、ぼんやりと教室から見える外の景色を眺めていた。
「……ねえ紗紀、聞いてる?」
「え?」
間近で聞こえたその声に、紗紀は我に返る。
辺りを見渡すと、講義を終えた生徒たちがいっせいに、教室の出入り口へ向かって歩いて行くのが目に映った。
いつの間にか講義が終わっていた。
目の前で友人の深水暎子が腰をかがめ、こちらを覗き込むように見つめていた。
「え? じゃないわよ。あたし、今日バイト休みだからお茶して帰らない? って言ったんだけど」
「あ、うん。そうだね」
心ここにあらずという紗紀の様子に、暎子は首を傾げる。
「どうしたの? 講義中もぼんやりしていたみたいだし、何かあった? 悩み事?」
「うん、まあね」
紗紀は言いづらそうに言葉を濁す。
「何よ。ほんと、どうしたの」
「話しても信じてもらえないと思うから」
すると、暎子は興味津々とばかりに目を輝かせ、身を乗り出してきた。
「何よ、その思わせぶりな言い方。ますます気になるじゃない。信じるかどうかは話を聞いてみないと何とも言えないけれど、とりあえず話してみなさいよ」
さあ、聞かせなさいと催促してくる暎子に、紗紀は苦笑いを浮かべた。
これは、話すまで解放してくれなさそうな雰囲気だ。
紗紀は一つ息をつき、暎子を見上げた。
「幽霊の存在って、信じる?」
暎子はぽかんと口を開け、目をぱちくりさせる。
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