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「君が寝不足だと言ったのは、目の下」
一空は紗紀の目の辺りを指さす。
「目の下にくっきりと黒いクマができているから。女の霊のことは後で説明しよう。静森紗紀さん」
紗紀は目を見開いた。
「名乗ってもいないのに、どうして私の名前を言い当てたんです! やっぱり」
「最初にここに来た時に免許証を見せてくれた」
紗紀は、あ! と声を上げる。
そういえば、未成年は保護者同伴ではないと買い取りはできないと言われ、証明書として免許証を一空に見せたことを思い出す。
「なら、私がアパートを飛び出し、友人の家に泊まっているのが分かったのは?」
「身支度だ。初めてここへ訪れた時よりも、メイクも髪もおざなりだ。洋服もしわがよっている。靴も今着ている服とまったく合っていない」
おざなりと言われ、紗紀は顔を赤くしながら手で髪を整える。
確かに友人の家だと、思うように髪を整えることもできないし、メイク道具も最低限のものしか持ってきていない。
服は家を出るときに適当に選んでスーツケースに詰め込んできただけ。靴は今履いている一足のみ。
ていうか、そこまで見られているのだと思うと恥ずかしい。
紗紀は靴を見られまいと足元をそわそわさせる。
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