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「もしかしてその簪、呪われているんじゃない? いわくつきってやつ?」
「呪われてる!」
思わず大きな声が出てしまい、慌てて紗紀は口元を手で押さえ辺りを見渡した。
幸い周りの人には聞かれていなかったようで、ほっと息をつく。
「まさか」
「だって、簪を手にした途端、家族の身に次々と不幸が起きて、毎晩知らない女の霊が現れては、恨み辛みを吐いて襲ってくるんでしょう? これって呪われているとしか思えないじゃない」
恨み辛みを吐いて襲ってくることは今のところないが、確かに簪を手に入れてから、次々と家族に不幸が起きるようになったのは事実だ。
父は会社の健康診断で疑わしいところが見つかり、再検査で胃に悪い腫瘍があるかもしれないと言われ、さらに精密検査で末期の胃がんと診断された。
父がそういう状況で経済的にもこれから大変になるかもしれないという時に、母の勤め先が不当たりで突然倒産。
さらに、姉は三年付き合った彼氏と婚約までしたのに、二股をかけられていたことが発覚した。
婚約者に裏切られ、傷心の姉の傷口にまるで塩を塗るかのように、相手の女性が妊娠していたことも分かった。
当然、婚約は破棄になり、姉は自暴自棄。
婚約者と同じ会社に勤めていた姉は、会社にいられなくなり、結局、退職に追い込まれた。
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