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「手放しちゃえば?」
「捨ててしまうってこと? なんかそれも気が引けるというか」
「捨ててもいいけど、価値がありそうな気がするなら売ってみたらって意味?」
「売れるかな。そういう物の価値って、私にはまったく分からないし」
「そういう店に持っていって査定してもらえばいいのよ。売れてお金が入ればラッキー、値がつかなくても引き取ってもらえないか交渉してみれば手放せる。それなら、捨てるよりはましでしょう。フリマサイトを利用するとか、売る方法は他にもいくらでもあるしね」
「うん、そうしてみようかな」
そこで紗紀ははたと気づく。
「なんならこの簪、暎子にあげようか? もちろんただで」
心霊大好きっていうくらいなら、むしろ暎子の方が喜んで貰ってくれるかと思ったのだ。もしかしたら、もれなく幽霊もついてくる。しかし、暎子の反応は紗紀が思っていたものとは反対であった。
暎子は嫌そうに顔をしかめる。
「やめてよ」
「どうして? 心霊ものが好きなんでしょう。霊体験ができるかもよ」
「あのねー、確かにあたしは心霊大好きだけれど、自分の身に怖いことが起きるのはイヤなの。幽霊を見るとか勘弁してよ」
興味があると言いながらも、そういうものなのだろうか。
「とにかく、何か進展があったらまた聞かせて。興味はあるからさ」
ということで、簪を手放すという方向で、とりあえず話は落ち着いた。
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