18人が本棚に入れています
本棚に追加
現在のこの状況を説明する為には、ほんの数分前に遡る必要がある。
俺が部室の鍵を職員室に置いて来るのを、悠斗はいつも通り昇降口の外で待っていた。
ちなみに、悠斗が当番の時は俺が同じ様にして待っている。
ケチくさく間引きされて点いている電灯が、今にも消えそうな程弱々しくチカチカ点滅していた。
ホラー映画の演出みたいなそれを見てイタズラ心に火が灯った俺は、悠斗をビビらせてやろうと思い立った。
そっと靴に履き替えて、音を立てずに悠斗の背後から近寄って行った。
解散がいつもより遅く、人気がなかった事で気が緩んでいたんだろう。
声をかける直前に俺の目に飛び込んできた際どい隠し撮り写真は、8月終わり頃のものだ。
着替えの時に急に始まった日焼け自慢のバカ騒ぎ中、悪ふざけで誰かが龍平先輩のトランクスを下げた。
ずっとカメラを向けていなければ撮れないくらい一瞬だったはずだ。
「悠斗…お前、それ」
大声で驚かせるはずが逆に驚かされてしまい、上擦った声が出た。
悠斗は慌てて画面を胸に押し当てて隠し、そのまま硬直していた。
体感10分…でも多分15秒くらいの沈黙の後で、悠斗が最初に言った言葉が
「絶対に誰にも言うなよ」
だったという訳だ。
最初のコメントを投稿しよう!