あと3センチ

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「あー…マジ死にたくなるわ」  項垂(うなだ)れてる悠斗に俺は言った。 「同じ位置にいれば安心するってんなら、俺の秘密を教えてやろうか?」 「え?」  悠斗が今にも泣き出しそうな情けない顔を俺に向ける。 「俺、お前の事が好きなんだわ」 「……」  全開の目、鼻、口。声を発さない代わりに顔が大分(だいぶ)うるさい。  あまりにも酷くて思わず吹き出しそうになった。  俺の人生初の告白なんだから、ちゃんと言わせてくれよ…。 「彼女持ちの龍平先輩とお前とじゃ、絶対にうまくいかないんだからさ…」 「顔、近…ぃ」 「俺にしろよ、悠斗」  壁を背にして逃げ場のない悠斗との唇の距離は3センチ。  最後の力を使い果たしブツッと電灯が消えた。  暗闇の中、3センチの距離を詰めたのは悠斗の方だ。  俺はそれをただ受け止めた。  10年間一度も見せた事のない表情(かお)をして。
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