あと3センチ

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 おい、聞いたか鈴虫。  聞こえたよな?コオロギ。  歌え‼︎騒げ‼︎求愛の大合唱で俺たちを祝え‼︎ 「やっぱナシ、とか言うなよ?」 「…そっちこそ」  今はまだ、困難だらけの暗い道でも…  誰にも言えないトンネルみたいな道でも…  2人で歩き続けて行こうぜ。  いつか必ず光は見えるから…  2人で肩を並べてまた歩き出す。  大通りまでの数分間、どちらからともなく手を繋いだ。  照れ隠しで肩を押し付け合っていたのが、どっかのコメディアンの様に段々と激しいぶつけ合いになっていく。 「(いて)ぇな」 「こっちの方が(いて)ぇっつーの」  鈴虫やコオロギたちの心地良い大合唱にいつの間にか加わるクツワムシやキリギリスの騒がしい声。騒ぐ俺たち。  親友だけど恋人。  恋人だけど親友。  今までもこれからも、お前の一番は俺でありたい。  絶対に誰にも言わせねぇからな。  この先ずっと…  俺以外に「好きだ」なんて。 「絶対に誰にも言うなよ」 「あぁ」 「絶対だぞ?言ったらマジでブッ飛ばすからな?」 「分かったって…しつけぇな」 「誓約書に名前書けよ。『三井孝之以外好きにならないと誓います。高柳悠斗』って。ケッパン押せケッパン‼︎俺が切ってやるから」 「それ、言われる側になってみると確かに(こえ)ぇな…」 「だろ?」 END
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