隣の席の地味子がおれの推し

10/15
前へ
/15ページ
次へ
 おれは堪らずその男女グループへずかずかと近づいて行く。  何事かと目を白黒させるやつらに、学ランとYシャツのボタンを全開にして叫ぶ。 「おれの推しの、マリンにゃんの悪口を言うなっ! マリンにゃんは可愛い上に歌って踊れて、見ている人に夢と希望と元気を与えることの出来るスーパーアイドルなんだぞ!!!!」  Yシャツの下に着ているのは、"マリンにゃん尊い!!"とでかでか書かれた自作Tシャツだ。 「マリンにゃんを悪く言うやつは許せない、マリンにゃんはおれのなんだっ!!」  しんっ……と静まり返る教室に、スピーカーから聞こえる「またたびみたいなあなたにわたしはとろけちゃうの~」というマリンにゃんの歌声が響いている。  はっと我に返る。推しを侮辱され、ついカッとなってしまった。おれは恥ずかしいやら、情けないやらで思わず教室を飛び出した。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加