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誰にも会いたくなくて、体育館裏で頭を抱えてうずくまる。
「どうして、あんなこと……」
そうじゃなくても【怖い人】として避けられているのに、【イタイ人】という肩書きまで背負うことになってしまった。
だけど、仕方ないじゃないか。推しを悪く言われるのは腹が立つし、隣に座るマリンにゃんの顔が──とても悲しそうで、苦しそうだったのだから。
いつも笑顔のマリンにゃんのあんな辛そうな顔は見たくない、心の底からそう思ったんだ。
「……はぁ、はぁ、やっと、追いついた! もう、アイドルをこんなに走らせるなんて!」
聞き馴染みのある声に顔を上げると、そこには肩で息をするマリンにゃんが立っていた。
追いかけて来てくれたのか? でもなんでだ? 混乱するおれを尻目に彼女はマイペースに続ける。
「あー、疲れた。どっこいしょ」
そんな老人めいたことを言いつつ、彼女はおれの隣へ座った。
「植田くん、あたしのファンだったんだね。全然知らなかったよ。……ねぇ、何であたしのこと推してくれてるの?」
「……え、それ本人の前で言うのか?」
どんな羞恥プレイだ。いや、公開処刑か? とにかくそんなこと出来るはずがない。
「言ってよ~。さっき教室ではもっとすごいことしてたじゃん!」
「あれは、なんていうか……つい、」
「あ、分かった。あたしのおっぱいが大きいから?」
「は? 違う、そんな理由じゃ──」
そんな下卑た理由で推してはいない。慌てて彼女を見ると、彼女もおれを見ていた。
「なら、教えて。本当の理由。誰にも言わないから、ふたりだけの秘密にしようよ」
長い睫毛に縁取られた大きな瞳に見入られて、おれはすっかりと観念してしまう。
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