隣の席の地味子がおれの推し

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「ねぇ、もうひとつ聞いていい?」  マリンにゃんはこてんと首を傾げる。ああ、その仕草もめちゃくちゃ可愛い! 「なに?」 「植田くんさ、本当にあたしのこと誰にも喋ってないよね?」 「え? ああ、うん。喋ってない」 「どうしてかなぁって、思って。あたしさ、実は今日はかなり覚悟して登校したんだよ?」  マリンにゃんが一体なにを言いたいのか、鈍感なおれにはよく分からない。どうしてって、そんなの決まっているじゃないか。 「絶対に秘密だって言ったから。だから誰にも言わなかったんだ」 「え、それだけ? でもでも、秘密って誰かに喋りたくならない? あ、それとも推しのお願いだからきいてくれた感じ??」 「いや、推しとか推しじゃないとか関係ないだろう。秘密にしてほしいことがあるなら、それが犯罪行為とか危険なことじゃない限りおれは秘密にする。バラしたりしない、絶対に」  マリンにゃんは「そっか……」と呟くと、遠い目をして何かを考えている様子だった。すると唐突に。 「植田くん、握手しよ!」  そう言って白くて小さな手をこちらへと伸ばしてくる。 「あたしたち、友だちになろうよ。あたしもさ、親しい人があんまりいなくて寂しいんだよね。植田くんとなら仲良くなれそう!」 「……マリンにゃんと、友だち??」 「え? もしかして、嫌なの??」  眉をハの字にしてしょんぼりする彼女の手を急いで握る。 「嫌じゃない!! 光栄過ぎる!!」 「光栄過ぎるって言い方ウケる~。なら、これからよろしくね!」  こうして俺は推しと友だちになった。……ああ、夢だとしたら覚めないでくれ!
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