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「おーい、植田くん。聞いてる?」
よく通るソプラノボイスで呼ばれてハッと我に返る。踊り場にいるおれを、1階から彼女が見上げている。
「痛いところがあったらちゃんと病院へ行くんだよ! お金は後で請求してね」
「……ああ、」
短く返事をすると、彼女はクスリと苦笑する。
「植田くんって本当にクールだよね! 口数が少なくて、男の中の男って感じがするよ~。頼れる兄貴、みたいな!」
なんと返したらいいのか迷って口を閉ざしていると、彼女は右手を小さく振る。
「それじゃあまたね、植田くん。今日は本当に助かったよ」
そう言い残して彼女はタッと走り去ってしまった。
おれは、あっ! と思ったが、追いかけることも出来ずにその場へ立ち尽くす。そして自分にだけ聞こえる小さな声で呟いた。
「……またね、か」
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