隣の席の地味子がおれの推し

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 その後、粛々とポスター張りを終えたおれは寄り道などせず真っ直ぐに家へと戻った。 「ただいま」  玄関で帰宅を告げると、リビングから母さんがひょこりと顔を出す。 「お帰り、龍臣(たつおみ)。あんた今日は早いのね」 「うん」 「今日の夕飯はあんたの好きな唐揚げよ」 「うん」  自室のある2階へと向かうおれに、母さんは呆れたような声色で言う。 「はぁ、あんたには愛想ってものがないのかしらね? いっつも怖い顔して、そんなんで友だちはちゃんといるの?」  それに対しておれは言い返したりはせず、部屋へと入った。  ……そもそも、おれが怖い顔なのは生まれついて目つきが悪いのが原因だし、愛想がないのは人見知りのコミュ障だからだ。それらの要因が重なった結果、おれは周りから【怖い人】認定されビビられ避けられまくっている。  おれは怖くなんてない、誰かを傷つけるようなことはしない、だっておれは、おれは── 「無害なただのに過ぎないのだから!!」  部屋中に溢れる相澤 マリンのグッズ、グッズ、グッズ!!  CDやライブDVDは基本として、ポスターやブロマイド、アクキーやアクスタも取り揃えており、ライブTシャツやペンライトも忘れない!  そう、おれは相澤 マリン……いや、の大大大ファンなのだっ!! 勿論、マリンにゃんの所属するグールプ【キャットガールズ】のFC(ファンクラブ)にも入会済みだ!
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