隣の席の地味子がおれの推し

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 おれは学ランと鞄を投げ捨てて、ベッドへとダイブする。そして枕へ顔をぐっと押しつけ、叫ぶ。 「は~~~~~~、近くで見た生マリンにゃん尊い~~~~~~!! しゅきぃ~~~~~~っ!! まじ推ししか勝たんっ!!!!!」  足をバタバタさせながら踊り場での一件のことを思い出す。咄嗟&知らなかったとはいえ、おれは推しを抱きしめてしまった……。 「ち、小さくて、柔らかくて、いい匂いがしたなぁ~」  顔を上げ、マリンにゃんの感触を思い出してうっとりする。きっと今のおれは相当キモい顔をしていることだろう……。  それにしても、だ。 「まさか、相生がマリンにゃんだったなんて……」  地味で目立たない相生と超売れっ子人気アイドルのマリンにゃんが同一人物だとはとても思えない。  しかし、よく考えてみると"相生 真里子"と"相澤 マリン"……名前が似ていないでもない。  相生がよく学校を休むのも、病弱だからではなくアイドルとしての仕事があるからだと考えればおかしくはない。 「お、おれの隣の席に座っていたのは、推しだったのか……、」  歓喜で体が震えてくる。  ああ、どうしよう。明日は一体どんな顔をして学校に行けばいいんだ! 絶対にオタク丸出しの気持ち悪い顔をしてしまう!!  だけど、だけど……こんなにも学校が楽しみなのは初めてだ!  顔の凶悪さと根暗な性格が災いし、学校に友だちなんてひとりもいない。毎日ひとりで辛かったが、隣に推しがいるならばこれからも頑張れそうだ。 「早く、早く明日にならないかな!」  ドキドキと高鳴る胸。おれはすっかりと舞い上がってしまっていた。
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