まるで冴えないモブ男子の僕の武器は超絶のイケボらしいです

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*****  一限から昼休みまで寝ているのは相変わらずで、昼休みになったところでそんな彼女の肩をつついてやって「お昼休みだよ」と伝えたくもなるのだけれど僕達がどれだけ――いや、それほどでもないのだけれど――要するに二人で過ごした時間はそう長いものではない――はずだ。  平野さんの恋人とされる上級生が教室に入ってきた。ずかずか入り込んできて、挙句、平野さんの髪に右手をすっと通す。――なんだかとても腹が立った。でも、僕に文句を言う権利なんてない。だって僕はデブでブサイクでまるで冴えない男子でしかないのだから。  ――と、そんなふうに諦観しているところに、いきなりだ、いきなり、平野さんが近づいてきた。そこにどんな理由があれ、正直、僕は嬉しかった。なにかを少し期待した。だけど飛んできたのは右のローキックだった、平野さんお得意の。  平野さんは――いまにも泣き出しそうな顔をして見上げてきた。なんだか悔しそうに「ばーか」と言い、恋人と去っていった。大げさな話、平野さんが幸せであればそれでいい――というはずだったのだけれど、なんだか胸の奥がずきんずきんと痛んだ。
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